CANAAN長崎英広が考える若手教育論

イメージを具現化する技術力を磨く。CANAAN 長崎英広が考える若手教育論

業界誌・一般誌での活躍はもちろん、大手化粧品メーカーのカラー剤開発にも携わってきた CANAAN(カナン) オーナーの長崎英広さん

国内外で開催されたセミナーの総動員数は10万人を超え、5冊の著書は日本だけではなく韓国や中国でも販売されており、現在のヘアカラーの土台を作ってきたひとりと言っても過言ではありません。

「夢を持って20代で上京し、当時目指していたものは全て手に入れたよ!」と話す長崎さん。

今回は、そんな長崎さんに次世代のトップスタリストを作り上げる「若手の教育論」についてお話を伺ってきました。

独自路線を見つけ駆け上がった20代

ーー長崎さんの代名詞といえばやはりカラー。何かきっかけがあったのでしょうか?

若かりし頃の私には「メディアにたくさん出られるようなスタイリストになりたい!」という夢がありました。当時の私は、この夢を叶えるために東京に出てきて、MINX(ミンクス)のスタイリストとして実績を積み上げてきました。

雑誌に出たい。

ヘアショーに出たい。

言葉にしてしまうとシンプルかもしれませんが、これが私を突き動かした原動力といって良いでしょう。

ご存知の通り、当時からスタイリストはたくさんいましたし、今のようなSNSの使い方もありませんのでスタイリストとしての差別化というのは今以上に大事であり、大変だったと考えています。

1990年後半でしょうか。当時は、雑誌やメディアではカット特集はたくさん取り上げられていましたが、カラー特集はほとんどなかったんじゃないかな。ちょうどその頃にホワイトメッシュが流行っていたのですが、実はちゃんと施術ができるスタイリストは限られていたんですよ。

ニーズがあるのに、正しく施術できるスタイリストが少ない。

だからこそ自分がなる。

そういった背景があり、カラーについて勉強し始めたのがきっかけだったと思います。

ーーニーズに合わせて「カラーに特化した美容師」を目指したということでしょうか?

半分あっていて、半分違うという感じですかね。

世の中的にカラーが根付いていく中で、カラーリストの人数も増えていましたし、業界紙では「専門職」としてカラーリストやカッターが取り上げられることが多かったと思います。

しかし、私が目指したのはカラーの専門家でもなく、カットの専門家でもありません。

カラーリストくらいカラーテクニックを持った美容師を目指しました。

日本においては「美容師は一人でなんでもでき、その技術でお客様を満足させることができる」というのが美容師の本質だと私は考えています。だからこそ、カット技術もカラー技術も隙のない美容師を目指すことにしたんです。

なので「カラーに特化した美容師」という部分はあっているのですが、カット技術においてもその辺のスタイリストには負けない、もちろんカッターにも負けない技術を持った「高い次元でのオールラウンダー」ということになりますかね。

また、ヘアショーの演出家とご一緒することがあり、その時に「カラーもカラーリストくらいできる美容師になった方がかっこいいんじゃないかな?」という言葉をもらい、カラーリストやカッターが業界紙で取り上げられる中でどちらもできる美容師として独自路線を確立して行きました。

結果、メーカーのセミナーや業界紙・一般紙のオファーも増えていき、スタイリストとしての実績もどんどん上がって行きました。

そして、30代の頃には目指していたことは全て手に入れたと思います。

ちなみに、私の中ではシャンプーひとつとっても美容師の技術だと思っています。オーナーとなった今でも、手が空いていれば自分のお客様には自分自身でシャンプーを行なっていますし、手を抜いたことはありません。

「(お客様が女性であれば)家に帰っても、素敵な女性でいられるように。」

そう想って施術を行なっています。

「CANAAN」の立ち上げは新たなチャレンジ

ーーまさにスタイリストとして輝いていた時代だと思いますが、なぜそこから CANAAN を立ち上げたのでしょうか?

正直、美容師という立場なら MINX にいた方がメリットは大きかったでしょう。辞める理由がなかったくらい、良いお店だったと思います。MINX時代には美容師として業界で注目を浴び、MINX の中でもトップクラスの美容師だったと自負しています。

しかし、とあるセミナーに参加した際にふと気づいたんです。

それは、経営を経験している登壇者の方々の言葉の重みでした。

背負っているものが違うというか、美容師としての自分にはないものを感じたんですよ。

そう言った体験を通して、40歳の時に CANAAN を立ち上げ独立しました。

ーー独立して変化はありましたか?

オープン当時、CANAAN は5人で運営していたのですが、臨店講習のオファーを受けたときに教育担当者から「うちのお店は(スタイリストが)100名規模なんですよ」って急に言われたんですよね。

いや、人数が多いからって何がすごいんですか?!って正直思いましたけど、きっと MINX にいたら冗談でもそんなこと言われなかったんだろうなぁと改めて自分の位置を認識できましたよ。

それがきっかけで一気にやる気が出たと思います。

その後、スタイリストの個の力に依存するのではなく小さい店舗でも売上を効率よく上げていくことに成功し、そういった側面での経営アドバイスのようなお仕事もいただけるようになりました。

また、私自身の変化という意味では、MINX にいた時は「これだけ稼いでやったぜ!どうだ!」と思っていた時期もありましたが、オーナーになってからは一切その感覚にはならないですね。

今は、CANAAN のスタッフたちが30代・40代になった時にどうやってお金を稼いでいくのか、稼いでいけるような美容師にどうしたらなれるのかを一緒に考え、進む方向を決めるサポートをする立場になりました。

売上主義も決して悪いことではありませんが、それだけに依存することは正直お勧めしません。

仮に売上が少いスタイリストがいたとしても、まずは「そのスタッフがベストな状態になるにはどうすればいいのか」を一緒に探す手伝いができたらと思っています。

若手教育における4つのポイント

ーー様々な経験をされてきた長崎さんが考える「若手教育」について教えてください。

私が考える若手の教育に必要不可欠な要素は「技術力」「想像力(発想力)」「接客(真心)」「Network(現在はInstagram)」の4つだと考えています。

これらの要素をしっかりと身につけていくために重要なのが、スタイリストデビューまでの期間です。

今は、スタイリストデビューまでのスピードが求められている世の中。この流れの中で、デビューが1日でも早い方が美容師として生きていくメリットが大きいのは言うまでもありません。

今までは、単価1万円を超える美容室では5年のアシスタント時代を経てデビューさせる美容室もたくさんありました。

時代は変わり、ネット集客が強くなり顧客の分散化も目に見えて出てきている中で、20歳で美容室に勤め、5年のアシスタントを経て25歳でデビューしたとしましょう。このスタイリストたちが、まともな顧客数を獲得する頃には20代後半〜30代になってしまいます。

これでは、今の時代を戦っていくことは難しいでしょう。

そこで CANAAN では、一般的に5年間の歳月を使っていたアシスタントの教育期間を「3年」に短縮しました。

「5年間の手厚いサポート」ではなく、そこから「スタイリストとして必要不可欠なもの」を取り出し、3年間という期間でスタイリストとして成長させてあげることを心がけています。

ーー2年も短縮することに弊害はないですか?

弊害が起きては、デビューさせる意味がありません。ましてや、CANAAN の看板を背負ってお客様と接するわけですから、手を抜いてデビューさせる理由はありませんよ。

CANAANの真髄は「技術は繰り返し。デザインは想像力と発想力。」だと考えています。

技術だけは何度も何度も繰り返し、身につけ、また学んでいくしかありませんが、美容師の基礎と言っても過言ではありません。そして、この土台となる底力こそが重要なのです。

デザインは想像力や発想力が必要になりますが、実は街を歩き色々なものから「スタイル」や「カラー」を意識して視覚的に取り入れることで養うことができます。たくさん引き出しを作っておくことが重要ですね。

そして、どういうスタイルがお客様にベストなのかを「想像(発想)」し、それを具現化できる「技術力」で再現する。

私は、この考え方をベースに若手の教育を行なっています。

ーー「接客(真心)」「Network(現在はInstagram)」についてはどのようにお考えですか?

CANAAN では、アシスタントの3年間でしっかりとした技術とある程度の顧客を抱えている状態でデビューさせるようにしています。

なので、アシスタント1年半でホットペッパービューティー上でデビューさせ、新規のお客様の予約ができるようにしているんです。やはり、実戦に勝る経験はないですよね。この段階で、お客様と接することでしか学べないことも経験してもらっています。

また、この数年で集客の新たなツールとして必要不可欠になったインスタグラムについても、アシスタントのうちから教育するようにしています。

技術力や想像力はとても大事なのですが、それだけではお客様はついてきません。というか、自分の存在を知ってもらう術すらないんですから。

とはいえ、自分の魅力をアピールするインスタグラムの運営など「今の時代ならではのやり方」が増えていますが、全てはお客様のことを考えた1つ1つの接客にあります。

方法や手段は常に変化しますが、本質的に美容師がやらなくてはいけないことは今も昔も変わってないと思いますよ。

次世代のトップスタイリストを目指す美容師たちにコメントをお願いします

まずは、焦らない。

そして、焦るべき場所でしっかり焦る。

若いときは絶対に不安が付き纏うもので、不安からくる焦りは特に禁物ですね。

私自身、三重県から出てきて東京の大きなお店に入ったわけですが、同期もたくさんいるし自分より若いメンバーだってたくさんいました。そういった美容師ならではの独特な空間の中で、ひとり焦り目先だけで行動してしまうと失敗する可能性がどんどん広がっていってしまいます。

焦るべきは、そこではありません。

日々、時が経っていく中で自分のやるべきことを想像しながら焦っていく、ということがとても重要です。

比べるのは、周りの同期や先輩ではないということです。

そして、美容師たるもの基本的にはお客様が第一。これが大前提です。

お客様のことを考えた接客があり、顧客となり、その経験がノウハウとして蓄積されて行きます。

そして、実績は自信となり、言葉にも重さが出てくることでしょう。

CANAAN 長崎英広

CANAAN(カナン) 代表兼スタイリスト。

業界でカラー技術を20年近く牽引。セミナー受講者は国内外で10万人以上。多数の美容師さんに永く支持される理由として、技術や理論、デザインだけではなく、美容師としての魅力が最大の秘訣。サロンではカミカリスマを受賞。高いカット技術とデザインカラーから白髪染めまで、似合わせ重視の提案が得意。

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