DECO呉等至

超えるべき壁と目標を設定。技術だけにとどまらないスタイリストの人間性を高める 呉 等至 のサロン作り

渋谷・表参道エリアで大型ヘアサロンを2店舗構える「DECO(デコ)」のオーナー 呉 等至さん。現在も、芸能人やモデルの方々を顧客に持ちスタイリストとしても活躍中です。

美容業界がインターネットに抵抗があった時代から、新しい集客方法の1つとしてインターネット集客に着目し、現在ではYoutubeやインスタグラムなどでも、自身のヘアサロンの魅力を発信しています。

実は、今回の取材のきっかけとなったのも呉さんのSNSの投稿

DECOの投稿する動画や写真には、スタッフとの信頼関係・交友関係にあふれるものがとても多かったのです。

本記事では、呉さんの考えるサロン作りについてお話を伺ってきました。

ロンドンと日本の美容業界を経験し、独立へ。

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ーー初めに、呉さんについて教えてください。

高校時代に自転車部に所属していまして、卒業後も競輪選手になろうと3年ほど頑張っていました。実は、競輪選手になれそうなところまで行ったのですが「一生競輪選手で食べていけるのか」など色々と考え、高校時代から気になっていた美容師を目指すことに。

東京に出てきて専門学校に通い、23歳の時に原宿のヘアサロンに就職しました。

当時はコンサバスタイルが流行っていて巻髪全盛期!しかし、私自身はそのスタイルをやりたいわけではなかったので、美容師の基礎的な技術を日本で学び、その後は海外でヘアメイクの勉強することに。

ロンドンで2年ほどヘアメイクの勉強をし、その間にヴィダルサスーンの学校にも通いました。

帰国後は、ヘアメイクか美容師か悩んでいたのですが、友人の紹介で新しく立ち上げたヘアサロンにジョインさせてもらい美容師の道を進むことに。

ーー日本に帰ってきて苦労したことはありますか?

ロンドンにいた2年間で日本のヘアサロンの技術はさらに新しくなっていました。そして、その技術から生み出される「雰囲気」が自分のスタイルとも相性が良く、とても興味深かったのを覚えています。改めて、美容師として再スタートしました。

苦労した部分といえば、やはり集客ですね。当時は、美容系ポータルサイトもそこまでパワーがなく、本当に集客に困っていました。

その時に「mixiが良いらしい!」と聞いて試してみたらものすごい集客があったんですよ。

当時は、日本の美容師はまだまだインターネットに抵抗があって、なかなか悩んでいた部分だったと思います。

「ネット経由で、こんなに集客できるのか!」と言うことに気づき、ネット経由だけで月に100人くらい予約が取れていましたし、美容系ポータルサイトも調子が良くなり、かなりの売上を作れたと思っています。

しかしながら「ネットで集客しているやつが、世の中的にちょっとハズレもの扱い」という空気感があったので、肩身が狭かった時もありましたね。

その後、33歳の時にDECOを立ち上げ独立しました。

理想のスタイルと顧客のニーズを掛け合わせたサロン作り

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ーーヘアサロン「DECO」のこだわりポイントを教えてください。

当時は「スタイルをしっかり作れる美容室」にしようと思って店舗の雰囲気作りにも力を入れたと思います。本当にコンサバ時代がすごい嫌いだったので、お洒落なビジュアルで、お洒落な空間を作ってやろうと意気込んでいたと思います。

オープンから1年くらいは我慢の時はありましたが、スタイルがヒットし始めフリーのお客様も増えてきて、五人でスタートDECOもその頃には10人以上になっていました。

ただ、お店の拡大とともに気が付くことも多くありました。

「今までのお店作りは、自己満だったのでは・・・」と。

それからは、自分たちのスタイルを取り入れつつ、お客様に寄り添ったニーズに合わせたお店作りを始め、現在では渋谷と表参道に10席以上ある美容室を2店舗構えることができました。

ーー人材という部分でもこだわりはありましたか?

そうですね。人材は非常に重要な部分だと思います。

スタッフの採用では、基本的には「自分に持っていないものを持っている方」を採用しています。

「能力的に自分ができないことができる方」「苦手なことを埋めてくれる方」を意識しながら採用を始め、十人十色の性質を持ったスタッフでDECOを構成していったと思います。

ただ、これは店舗が大きくなるにつれ大変なポイントでもありましたね。

サロンスタッフとの関係づくり

ーー人数が多くなるとオーナーとしての視点も変わってくるのではないでしょうか?

十人十色の性質を持ったスタッフが揃い埋め合うことでお互いに高め合っていくようなヘアサロンを目指しましたが、大きくなればなるほど個性をまとめるのは大変でしたね。

また、やはり自分に近い人間を呼び寄せてしまうと言いましょうか。良い意味で、結局似たような人が集まっていると思います。

決して悪い意味ではなくて、アーティスト性や個性は大事にしつつ、大きな集団や組織として働きながらともに成長できるメンバーということが一番重要で理想的ですよね。

そして、やはりスタッフとの関係づくりや距離感については、かなり気をつけていますよ。

私の立ち位置としては、仲が良くても決して馴れ合いにならないように意識しています。

「プライベートとサロンワークをしっかりと割り切って、近すぎず遠すぎずの関係」

これが重要です。

サロンワークでは、各スタッフには「自分がどうなりたいか」「どんな夢を持っているのか」など、目標設定をするように言っています。

目標設定がないとなかなか成長しないし、モチベーションにもつながらないんですよ。なんのために頑張っているのかわからなくなってしまって。

日々、私が俯瞰的に見た上で、そのスタッフの成長や目標などを把握しようと努力しています。

結果がついてこないと腐ってきてしまうこともあるでしょう。そんな時は、結果を出してあげるために経営者としてサポートするというのは当たり前でありつつとても重要なことです。

私が鼓舞することももちろんありますが、最終的には自分で結果を出せるようにサポートしてあげていきたいですね。

ーー「近すぎず、遠すぎず」とはいえ、店舗の雰囲気としてかなり仲の良い印象を持っていますが、秘訣はありますか?

 

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呉 等至/DECO代表(@deco_kure)がシェアした投稿

個々の捉え方次第ではあるので一概にはいえませんが、先ほども話した通り「割り切っている」というのが大きいですね。

プライベートは、しっかりと割り切ってみんなで楽しく!

「オーナー」や「マネージャー」「スタイリスト」「アシスタント」など、サロン内には様々な立場がありますが、仕事が終わったら立場は一緒。

極論、人間的な立場は誰もが同じなんだと考えています。

SNSの投稿を見ていただいたとのことですが、それはその一部が垣間見えたのかもしれませんね!

しっかりと話を聞く時は聞き、時には厳しくする時もあります。仕事を通じてお互いに信頼を感じ、みんなで楽しく長所を伸ばせるような空気づくりを大切にしていきたいですね。

スタイリストたる者、基礎技術は必須。あえてハードルを超えさせる教育

ーースタッフの教育についても教えていただけますか?

はい、私たちは「技術」があってのスタイリストですので、カットの基礎技術は絶対。いくら尖っていても、独自のスタイルを持っていても、基礎技術がないと話になりません。

これは反復練習するしかなく、脳と指がリンクする感覚を掴んでもらわないといけませんね。これに、2年から2年半はかかると思います。

「練習で他の人のスタイルを真似をする」と言うこともあるかと思いますが、そうは言っても実は簡単なことではなく技術がなければ真似すらできないんですよ。

この基礎技術が身につき脳のイメージに対して手が反射的に動くようになると、成長速度が一気に加速します。

自分のイメージをスタイルとして具現化でき、他の人のスタイルを吸収し自分なりの知見を貯めていくことができるでしょう。

ーースタッフの成長のために、課しているものは他にもありますか?

そうですね。

アシスタントからスタイリストになる際に「テスト」がありまして、ここについては決して手を抜いたことはありません。

「スタイリストになるための壁」と言うのを設けていまして、技術面・人としての成長なども考え、その壁を乗り越えるという経験をしてもらっています。

「スタイリストになれないかもしれない」というハードルを作ってあげることでアシスタント時代の吸収率や成長率も変わるので、充実したアシスタント時代を送ってほしいと願うばかりです。

ゆるい感じでスタイリストになれるなんて、甘いですね!

この壁をクリアできないのであれば、少なくともDECOでは永遠にスタイリストにはしません。

「スタイリストになると言うことは、特別なことなんだ」と、しっかりと考え、感じながら成長してほしいですね。

これからの「DECO」について

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ーー今後の展望について教えてください。

DECO / Kurtがある意義は「人が育つ場所であること」

そして、夢は「100人の個性溢れる売れる美容師が育ち、日本一の美容室になること。」

by 呉 等至

オーナーとして、やはり店舗の拡大を1つの目標に掲げています。

日々の集客、サロンスタッフの採用などあげたらキリがありませんが、ヘアサロンを運営する上でやらなくてはいけないことは山ほどあります。

ヘアサロンのあり方をしっかりと仕組み化・マニュアル化し、今やっていることを再現性高く広げていきたいですね。

DECOと言うブランドとしては「人が育つ場所であること」を掲げています。

現在ヘアサロンの数は非常に多く、新店舗もたくさんあります。しかし、全てのスタイリストが独立を目指しているわけではありません。

私には「美容師としてしっかりと育てていきたい」と言う想いがあるので、DECOと一緒に成長したいと思ってくれるアシスタントやスタイリストが成長できる場を作っていきたいと考えています。

人材育成をお店として仕組み化し、どんどん広げていきたいですね。

結果、この業界の底上げにもつながると思っています。

DECO 呉 等至

1978年生まれ、愛知県出身。山野美容専門学校卒業後、都内2店舗を経て渋谷・原宿「DECO(デコ)」をオープン。2021年に表参道に「Kurt by DECO(カートバイデコ)」をオープンし2店舗のオーナーを務める。

女性の魅力を最大限に引き出すセンスが人気。再現性の高いハンサムショート、ボブ、カットは大得意。芸能人、モデルなどを顧客に持ち、雑誌の撮影に携わるほか全国でセミナーなども多数行う。

現在は、SNSへの取り組みも積極的に行なっており、YouTube(DECO美容室 Posa1 CHANNEL)で動画も配信中。

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